第3回【富士山と天気】


【富士山と天気】

 今回は富士山の天気の話をしようと思います。
 私のいた富士山七合目で標高約3000メートル、8月の気温は、日中の最高気温で
10度を越えるぐらい、朝方は0度近くまで冷え込みます。
 夜は東側の湘南方面の夜景を見ながら、下界は熱帯夜でさぞ寝苦しいことだろうと想
像するぐらいですから、この季節では別天地と言えましょう。また、山の上は霧の日が
多く湿度は高いだろうと思っていましたが、意外に乾燥していて喉が乾きます。山から
平地に降りると、普段こんなに湿ったところに住んでいたのかと思いました。

 いはゆる梅雨明け10日ぐらいの時が、一番天気が安定していますが、毎日昼頃にな
ると上昇気流の影響で、下から霧が上がって来ます。午後は、時によっては雷雨、また
夏でも小豆ぐらいの雹が降ったこともありました。やはり山は日の出とともに行動し、
早着きが一番です。

 変わった気象現象にも出会いました。
 太陽を背にして自分の影が雲の上に写ると、影の周りに光輪が出来るブロッケン現象
が見られます。面白いのは、手を振ると影もいっしょに手を振ります。何人かで並んで
見ると、それぞれ自分の影を中心に光輪を見ているので、隣り人が手を振っても、自分
の影は動きません。
 東に雲海が出来ていて山の中腹以上が晴れているときは、夕方に見事な影富士が見ら
れます。長く延びた富士山の形が遠く離れた雲海の上まで現れ、日の入りとともに薄く
なって消えていきます。
 また、下界が雲海の下で天気が悪いときでも、山の上は晴天ということがよくありま
す。下界に戻って青空が見えない日が続いても、雲の上の青空を想像するようになりま
した。

 3000メートル附近では、気圧は地上の3分の2です。ポテトチップの袋は、山の
上では風船のように膨らんでしまいます。袋を開けるとき注意しないと、開けた瞬間に
中の空気が飛び出して、あたり一面にポテトチップが散乱してしまいます。インスタン
トコーヒーの瓶のふたを回した瞬間に暴発して、頭からコーヒーの粉をかぶるという事
件も発生しました。また、一番困るのは沸点が下がることで、ご飯は圧力鍋を使って炊
いていました。
 空気のうすいところで、運動したらどうなるか?「富士登山駅伝」の話は、またの機
会にお話します。

                                第3回終わり
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First issue Aug. 6 1996(Rev.0)