夢の金剛山周遊記(2日目)


2日目(毘盧峰から温井里まで)

 夜明け前に山荘を出て、月明かりをたよりに山頂を目指す。山頂に達する頃、東の空に暁の光が明るさを増してきた。やがて東海(日本海)からの日の出を迎える。闇に埋もれていた集仙峰(チプソンボン)、世尊峰(セジョンボン)の岩壁や谷に朝日が当たり、立体感を持って現れてくる。手前から玉女峰(オクニョボン)、観音峰(クワヌンボン)、水晶峰(スジョンボン)から続く鋸のような尾根の頂が、赤々と照らされている。頂上からの展望を満喫し、山荘に戻る。
 今日は玉流洞(オクリュードン)、神渓川(シンキェチョ)を下り、温井里(オンチョンリ)まで16kmの道のりである。山荘を出発して樹林の中の下ると新羅太子墓(シルラテーヂャミョー)に着く。ここで道を右にとり毘盧峰東壁の上に出る。ここからは、世尊峰の西壁と玉流洞の谷の深く侵食された様子がよく分かる。
 ここから、300メートルの標高差を一気に下り、源流の流れで喉を潤す。ここから見上げる毘盧峰山頂は、先ほどまで居たのが嘘のような遥か岩壁の上である。腰を上げて渓谷の左右の岸を移りながら下っていくと、やがて谷の両側が狭まり、花崗岩の一枚岩の上の八つの滑滝と淵が連なっている八潭(パッダム)にかかる。
 この下流は、落差約110メートルの九龍瀑となるため、道は右手を高巻く道となる。巻き道を登りやがて滝の下をめざして急降下すると、九龍瀑の轟音があたりに反響する。下り着いた九龍淵(クリョンエン)には、上流の水を一手に集め一筋の太い流れとなって落ちている。今日は朝が早かったためここで大休止とし、岩の上で巨大な滝を見上げて昼寝をする。
 やがて太陽も高くなり出発する。ここから、神渓川の出合までは、樹林の中の快適な下りである。途中右手の遥か上からの水流が、風で翻弄され広がって落ちている飛鳳瀑(ビーポンポ)が見える。なおも下り、岩盤の上を白濁した水が流れ下る玉流洞(オクリュードン)を過ぎ、もう1つの金剛門(クムガンムン)をくぐり、一广台(イルチンデー)に出る。ここからは観音連峰、世尊峰の岩稜が見上げられる。
 ここから、神渓川に沿って下ればやがて道も広くなり、人間の営みを拒絶しな厳しい自然の世界から、人間の住む世界に戻ってほっとする。やがて、左手に神渓寺(シンケェサー)が見える。神渓寺は、内金剛の長安寺に匹敵する古刹であるが、往時をしのぶものは新羅の古塔だけである。
 小休止の後、極楽峠(ウンナクヒョン)に登ると、世尊峰から集仙峰(チプソンボン)にかけての岩壁が圧倒的な迫力で見渡せ、長かった行程の最後にふさわしい風景であった。あとは、坂を降りて温井里の旅館に着き、早々に温泉に入り山行の疲れをいやした。


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上八潭

九龍台から俯瞰すると薬研の如うな渓底に八個の碧潭が数珠と連っている。

九龍淵

瀑身百七十余尺、瀧壷の深さ三十余尺、金剛山最大の瀑布である。瀑上瀑下は只だ一枚の盤石から成りて辺りには一塊の土をも見られない。

飛鳳瀑

飛鳳瀑の水は九龍の傍渓である。大石峯の頂きから落下する飛鳳瀑の水量は決して多くない、然し若し水量多ければ到底接近出来ぬ程の大落差をもって居る。

神渓寺の古塔

神渓寺の本殿般若宝殿の前庭に古色蒼然たる一石塔がある。創建以来幾度か祝融の災に罹り堂殿その昔を伝えざる中に、独り此石塔だけが千六百余年の鮮苔に包まれて居る。


集仙峰

文殊峯の頂きから、神渓寺の松林を前景として集仙峰の雄姿が目を駭かす。

温井里

金剛山の探勝客は此町に宿を定めて山登りにかかる。町には天然温泉が湧出する。

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First issue Jun.30, 1996.